−R5− 世の中を歩き回るブログ

頭を使って歩こう。朝まで歩こう。5年後の自分に向けた備忘録。

ネット人狼が、ビジネスの心構えを教えてくれた話。

一時期、ものすごくブームになった「人狼」というゲームを知っていますか。

知らない人のために簡単に説明すると、3~10数人で構成された「村」があり、プレイヤーはそこの「村人」という設定です。ただ、みんな仲良し争いなんて世界はしらない、ハッピーに生きようよこんな狭い世界なんだし、という環境を脅かす出来ことが起きてしまいます。仲間だと思っていた村人の中に、人間を食らう「人狼」という化け物が存在するというのです。

人狼は村人に化けているため、見た目では全く見分けがつかない。ただ、人狼を追い出さないと毎日(毎ターン)村人が食い尽くされてしまう。人狼は村人に気づかれずに、村が全滅するまで食い尽くしてやるぜ。それまでになんとか人狼を見つけ出し、さらし首にしろ!というゲームです。

 

本来は対面で友達同士和気あいあいと、時には疑心暗鬼になりながら楽しむゲームなのですが、最近はうれしいことに技術が発達しているので、アプリを通じて日本中の人とオンラインで人狼を楽しめるようになっています。これを「ネット人狼(または人狼オンライン)」といいます。

 

7年位前だったと思います。まだ、スマホが今ほど出回っていなくて、アプリもそれほど充実していなかった時代。僕はパソコンを使ったネット人狼に出会いました。定員数とルールが定められたチャットルームのようなところに自由に参加し、定員に達すると自動的に人狼が開始されます。そこからは、もうそのルームにいる人たちだけの村になるわえです。村人はだれか、人狼はだれか、人狼を見つける手助けをしてくれる占い師はだれか、人狼の殺害を防ぐナイトはだれか。最初は暇つぶし程度に初めて見たのですが、意外とはまるもので長いときは3時間くらい画面にかじりついていました。

 

ネット人狼はプロといいうか、常連さんみたいな人がたくさんいて、ネット人狼界でも軽いコミュニティができているほどです。しかも、対面人狼と違って、ゲームをより高度化して、難易度と戦略性を高めるための細かくて複雑なルールがたくさんありました。

 

最初の数ゲームをこなしていく中で、やっと基本的な役割とルールを覚えられるようになり、その後の数ゲームで自分なりに戦略を立てたり、何か策を打ってみたり、とできるようになるわけです。

 

とはいえ、まだまだはじめて数日や数週間のぺーぺー。

ものすごいスピードで流れるチャットや、細かなルールに対応できず、メンバーに迷惑をかけてしまうこともありました。

 

そんな中、僕なりに処世術として身に着けたスキルは、

「僕は初心者なので皆さんに迷惑をかけてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします」

と最初に宣言してしまうことでした。

ルームのメンバーに周知することで、僕が初心者だと知ってもらうわけです。

そうすると何が起きるか。

 

まず、チャットが遅くても怒られなくなります。そして、少しくらいミスをしても怒られなくなります。さらに、みんなが僕にやさしくしてくれます。

「ルール大丈夫そうですか」「投票(毎ターン終了時にだれを人狼と推測するか投票します)間に合いましたか」など、めちゃくちゃ優しくなります。それからというもの、ゲームは本当に楽しかったです。ときに村人を欺き、ときに村人を守り、そしてときに人狼を見破る。ますます熱中していくわけですよね。

 

ある日、いつものようにルームに入り、メンバーがそろったのでゲームが始まりました。僕にとってはいつもの日常。いつものルールで、いつもと同じように始まる人狼

の、はずでした。

「初心者なので、いろいろ迷惑をおかけしてしまうかもしれません。すみません。でも頑張ります」

定型文のような挨拶をして、さあ楽しもう、と思ったとき。ある村人が返信をくれました。

「初心者ですと名乗るのは、マナー違反です」

びっくりしました。

え?だってルールブックにはそんなこと書いてないし、いままでも何百人とネット人狼やってきたけど、そんなこと言うひと一人もいなかったよ?よくある「自分だけマナー」に違反したからマナー違反とか言ってるんじゃないの?

そのくらいの気持ちでなんて返信しようか悩んでいたところ、

違う村人からも次々と返信が届きます。

 

「確かにそうですね、このルームでは初心者ですと名乗るはやめましょう」

「たまにそういう(初心者だと名乗る)人いて、俺ももやもやしてたんだよねー」

「初心者です、ってずるいよね」

 

え?まじで?

 

納得しきれずに、すでにゲームが始まっているにもかかわらずその理由を聞いてしまいました。

「なんでこれマナー違反になるんですか?僕が初心者なのは事実だし、ルールを忘れていたり、返信や回答が遅れる可能性もあったので最初に言っておこうと思いまして」

 

半ばキレ気味です。それも逆ギレ寄りの。逆半ギレの僕にも、メンバーの方々は丁寧に教えてくれました。「初心者を名乗る」これ自体がマナー違反になる理由を。

 

最も大きな理由は、

【初心者と名乗る玄人が、初心者であることを盾にゲームの公平性を欠くようなプレイをする可能性があるから】

だそうです。

言い換えれば、初心者と名乗れば得られる恩恵を逆手に取って自分の都合のいいようにプレイしてしまうということです。

 

たとえば、

・チャットが遅くても怒られなくなります。→戦略や考え事、人狼同士の秘密トークをしていてチャットで発言できていない場合も、初心者ですといえば許されてしまう。

・少しくらいミスをしても怒られなくなります。→人狼であることを隠すために、故意にミスをしたり、場をわざと混乱させても許されてしまう。

・みんながやさしくしてくれます。→優しくしてくれるということは、疑いの目が向きにくくなるということでもある。

 

こんな風に、初心者と名乗るのは長年プレイしてきた人にとっても大きなメリットがあるのです。

だから、たとえこれが人生で初めてのネット人狼だとしても、初心者だと名乗るのはマナー違反になる。と

と教えてもらいました。

 

でも、僕がこの出来事でもっと大きな学びを得ていました。それは、社会に出て痛感した出来事でもあります。ネット人狼で初心者であることを語るのは、マナー違反になるという話をしてきましたが、それはつまり、お前が初心者であろうがなかろうが、この場のこのゲームにはなんも関係ないんだから、そんな詰まらねえことを場に持ち出してくるなってことなんですよ。

 

初心者であることは、免罪符にならない。

 

ということです。

 

僕は初めて社会に出て、これを痛感する瞬間や場面に何度も出会いました。

新卒1年目だろうが、10年目のベテランだろうが。

この業界に弱かろうが、強かろうが。

この仕事が不得意だろうが、得意だろうが。

クライアントに、ビジネスパートナーに、競合にとって。

それは1mmも関係ない、くそほどどうでもいいことなんですよ。

 

「初めまして、○○と申します。今年入社の1年目です!」なんて挨拶をしていい場面は、先輩からクライアントを引き継ぐときであってもしてはならないんですよ。だって、その人にとってその情報が、何になるんですか。どんなメリットを生むんですか。

ビジネスという土俵に立った以上、初心者は免罪符にならない。それは、ネット人狼でルームに入った以上、初心者が免罪符にならないのと似ている。ビジネスでの心構えは、どこで得られるかわからないんです。さて、これは村人の正直で偽りない昔話か、村人を食い尽くす人狼の単なる嘘か。

 

余談ですが、僕、結構人狼強いです。

機会あればぜひ、いつかお手合わせを。